非常用炉心冷却装置(ECCS)
【読み方:ひじょうようろしんれいきゃくそうち、分類:原子力】
非常用炉心冷却装置(緊急炉心冷却装置)は、「ECCS:Emergency Core Cooling System」とも呼ばれ、原子炉内の冷却水が減少したり、配管が破断したりして、急速に冷却水が流失するといった事故(冷却材喪失事故)に備えて、緊急に炉心を冷却するために設けられている装置をいいます。これは、原子炉が空焚き状態になることを防ぐ安全系の最重要装置(工学的安全施設)の一つで、原子炉の中へ大量の水を送り込んだり、直接燃料棒に水をかけて冷やしたりして、燃料棒の崩壊熱による破損を防止する役割を果たします。
一般に沸騰水型原子炉の場合、高圧炉心スプレー系、低圧炉心スプレー系、低圧注入系、自動減圧系などから構成されます。また、加圧水型原子炉の場合、蓄圧注入系、高圧注入系、低圧注入系などから構成されます。例えば、炉心スプレー系の冷却装置では、ドーナツ型の穴のあいた水管があって、炉心の水が減ると自動的にスプレーのように放水され、燃料棒を冷やします。
2011年3月の福島第1原発事故では、東日本大震災の津波により、外部電源が止まって原子炉冷却機能が失われ、さらに非常用炉心冷却装置も動かなくなったことから、炉心溶融(メルトダウン)や水素爆発が起こり、史上最悪のレベル7の原発事故となりました。